目次

サービス付き高齢者向け住宅の位置づけと、高齢者住まい法の改正について
(1)サービス付き高齢者向け住宅とは?
老後の暮らしに不安がある高齢者にとって老人ホームや介護施設などは安心できるものですが、最近では応募者の増加に伴い、なかなか入居することができない現状があります。
そんな中、急増する需要に対応するために誕生した新たなスタイルの高齢者の住まいが、「サービス付き高齢者向け住宅」なのです。
この住宅は、老人ホームなどのように大勢の高齢者が入居する施設とは異なり、一般の住宅同様、高齢者が自らの生活空間を確保しつつ、バリアフリーに配慮したハード面での整備や、定期的な安否確認・生活相談サービスといったソフト面の整備を行ったものです。
こうした住宅は、高齢者にとって安心できるものであると同時に、事業者にとっても、大きなビジネスチャンスといえます。
近年になってこうしたビジネスが誕生したのには、高齢者住まい法という法律の改正が背景にあります。
(2)高齢者住まい法の改正
高齢者住まい法は、正式名称を「高齢者の居住の安定確保に関する法律」といい、平成23年の10月に大幅改正された法律です。
この法律においては、不足する高齢者の居住需要を満たし、適切なサービスを受けられるよう、諸々の規定がなされています。
従来高齢者は老人ホームのように「施設に収容する」というイメージが強かった日本において、「社会の中で援助を受けながら高齢者が自立する」方針を打ち立てたという意味で、今後の介護業界に大きな影響を及ぼしています。
サービス付き高齢者向け住宅の入居対象者について
(1)入居者のパターン
サービス付き高齢者向け住宅は、一定の基準を満たすことによって、税制上の優遇措置を受けられたり、建築費の補助を受けられるものです。
そのため、気に行った人なら誰でも無制限に入居させられるという訳にはいかず、入居対象者には一定の条件が課せられています。
原則として、この住宅に入居することができる対象者は、以下の2パターンに限られます。
- 単身高齢者世帯
- 高齢者+同居者
単身高齢者世帯は分かりやすいでしょうが、同居者にはどのような条件があるのでしょうか?
実は、若い子どもや孫と同居できる場合など、支援を必要としない同居者がいる場合、基本的にはこの制度の対象とはなりません。
同居者として認められているのは、「配偶者」、「60歳以上の親族」、「要介護・要支援認定を受けている親族」、「その他知事が認めるもの」に限定されています。
(2)年齢要件と介護区分要件
このように、この制度を活用するためには入居条件が設定されています。
60歳という年齢要件はわかりやすいでしょうが、要介護・要支援の区分についてはなかなか分かりづらいこともあるでしょう。
また、介護区分への認定が必要にもかかわらず、いまだ認定されていないことにより、せっかくの入居の機会を失っておられる方もいらっしゃると思いますので、入居者の募集の際は、この辺りも分かり易く説明する必要があります。
サービス付き高齢者向け住宅の登録主体と自治体との関係について
(1)登録の主体
サービス付き高齢者向け住宅を建築し、その登録を受ける主体は、運営する事業者となります。
この認定を受けなければ、税制上の優遇措置や、建築費の補助も受けることができず、入居者の募集や入居の受け入れができません。
また、無登録で事業を行った場合は罰則を受けることもあります。
これからサービス付き高齢者向け住宅事業に参入しようとする場合には、法律を確認して、確実に登録を受けましょう。
(2)登録を行う自治体
従来、国民の住宅政策については国土交通省が、介護福祉政策については厚生労働省が担ってきました。
しかし、近年急速に進む少子高齢化に伴い、高齢者の住まい政策については、まったなしの状況になってきたのです。
これを受け、高齢者住まい法が改正され、この制度がスタートしました。
この事業は、国土交通大臣と、厚生労働大臣の共管事業となっています。
また、具体的に個別の事例について登録や監督を行うのは、住宅が存在する都道府県の知事となります。
ですから、事業者が登録の申請を行うためには、自治体である都道府県の知事に対して行わなければなりません。
もっとも、都道府県庁の内部で本事業を所管する部局は自治体によって様々であり、その登録については煩雑な部分もあります。
スムーズに登録を受け、安心して事業をスタートさせたいとお考えでしたら、お気軽にご相談ください。
サービス付き高齢者向け住宅の補助金、税の優遇措置、融資について

高齢者が安心して住まうことのできる住宅需要を満たすため、国はサービス付き高齢者向け住宅に対して数々の優遇措置や援助策を設けています。
それらは大まかに分けて「予算」、「税制」、「融資」の三種類に分かれています。
具体的にはどういった措置が用意されているのでしょうか?
(1)予算措置
予算措置として、サービス付き高齢者向け住宅を建設、もしくは改修する事業者に対して補助があります。
具体的な金額は、建築費の10分の1、改修費の3分の1です。
上限は1戸あたり70~195万円ですが、事業者に直接補助が行われることから、その存在は大きいといえます。
(2)税制
また、事業や不動産にかかる様々な税金についても優遇措置が存在します。
法人の事業に対しては、所得税・法人税の割増償却、また住宅の不動産に対しては、固定資産税の減額や、不動産取得税の軽減措置が用意されています。
より多くの事業者、不動産所有者がサービス付き高齢者向け住宅に参入することを期待したものです。
(3)融資
また、サービス付き高齢者向け住宅の取得に対する住宅金融支援機構の融資要件が緩和されます。
そのほか、リバースモーゲージと呼ばれる融資についても、住宅金融支援機構の融資保険対象となります。
このように、サービス付き高齢者向け住宅の普及、供給促進に向け、国は様々な優遇措置を用意していることが分かります。
サービス付き高齢者向け住宅の他の施設との違いとは?

近年登場して着目されているサービス付き高齢者向け住宅ですが、これまで介護業界に詳しくなかった人にとっては、他の施設との違いが分からない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
介護業界に存在する施設には、「有料老人ホーム」、「特別養護老人ホーム」、「老健施設」などなど、その名称は様々です。
しかしそれらの施設と、サービス付き高齢者向け住宅には決定的な違いが存在します。その違いとは何なのか、なぜその違いが注目されているのか、近年の介護業界を見ながら考えていきましょう。
(1)決定的な違いは何か
まず、サービス付き高齢者向け住宅とその他の施設との決定的な違いは何かというと、高齢者が自活しているかどうか、という点です。
一般的な施設は老人ホームのイメージ通り、自分で動くことが難しくなった高齢者が、常時介護してくれる施設に入居するものです。
しかし、サービス付き高齢者向け住宅は、基本的な生活は従来通り高齢者自身が行う点でこれらの施設と異なり、住みやすいハード面の整備や、随時安否確認や生活相談が受けられる点がポイントなのです。
(2)なぜその違いが重要か
高齢者が安心して自活できる住宅の供給というものは、従来の日本の法制度では整備されていない部分でした。
そのため、孤独死する老人の増加や、ホームの応募超高倍率化などにつながってきたのです。
従来の需給のアンバランスを埋める存在、それこそがサービス付き高齢者向け住宅です。
開業や運営に興味のある方はぜひご相談ください。
サービス付き高齢者向け住宅として登録するメリットとデメリットとは?
(1)サービス付き高齢者向け住宅として登録するメリット
1.情報提供システムにより広く公開され、都道府県知事からの「お墨付き」が得られる。
信用を担保されると共に、宣伝効果もあり、これは登録されることの最大のメリットではないでしょうか。
都道府県知事が審査を行い、登録されると、情報提供システムにより、全国から都道府県ごとにサービス付き高齢者向け住宅を調べることができる様になります。
無登録の高齢者向けの一般住宅とは異なり、高齢者にとって「安心感」を与えられることは間違いないでしょう。
もちろん、掲載料は一切掛かりません。
2.建築費に対して補助金が受けられる。
「サービス付き高齢者向け住宅整備事業補助金」として、建築費の10分の1、改修費の3分の1、(※上限あり)もの補助を受けることができます。
なお、こちらの補助金はある程度整備が進んだと判断されれば、廃止または縮小される可能性がありますので、注意が必要です)。
3.税制の優遇制度がある。
固定資産税について、一定の要件を満たすことで、5年間税額について2/3を参酌して1/2以上5/6以下の範囲において市町村が条例で定める割合を軽減(一般新築特例は1/2軽減)できるという税制優遇措置(※令和5年3月31日まで)が設けられています。
不動産取得税について、一定の要件を満たすことで以下の税制優遇措置が設けられています。
家屋:課税標準から1200万円控除/戸(一般新築特例と同じ)
土地:次のいずれかの大きい方の金額を税額から控除(一般新築特例と同じ)
①4万5,000円(150万円×3%)
②土地の評価額/m²×1/2(特例負担調整措置)×家屋の床面積の2倍(200㎡を限度)×3%
(2)サービス付き高齢者向け住宅として登録するデメリット
1.補助金を受けるには、最低10年間は運営を継続しなければならない。
登録自体は5年ごとの更新ですが、補助金の交付要件として、最低10年間の事業継続を求められています。
仮に10年に満たずに登録・運営が中止された場合には、補助金返還の対象となることもあります。
2.複雑で手間の掛かる事務手続きが必要不可欠となります。
登録手続きはもちろん、補助金の交付申請手続きや、その後の完了実績報告手続きに至るまで、非常に面倒で手間が掛かります。
また、最低10年間は、運営状況の報告をしなくてはなりません。また、登録事項に変更が生じた場合は、
その都度、変更登録申請をしなければならず、キチンと対処をしなければ、行政指導を招いてしまうことになりかねません。
行政からの「お墨付き」がある反面、しっかりとした事業運営が求められます。
3.家賃設定や、居室面積、入居者に制約がある
近隣の家賃と比べて、極端に高かったり、均衡を失うような安すぎる家賃設定は原則として出来ません。
また、1部屋あたりの面積要件がありますし、入居者も高齢者(例外あり)に限定されるため、一般の賃貸住宅と異なり、自由度が狭くなってしまう点はデメリットといえるのではないでしょうか。
これらのメリットとデメリットを天秤にかけ、様々な環境やご自身の置かれた状況等を考慮の上、サービス付き高齢者向け住宅として登録するかどうかを検討する必要があります。



サービス付き高齢者向け住宅で、最低限必要な構造や設備等の要件

では、実際にサービス付き高齢者向け住宅を開業しようとした際、どのような準備が必要になるのでしょうか?
ここでは、部屋の中の構造や設備など、ハード面で最低限、クリアしなければならない点について説明していきます。
設計、工事にもかかわる点ですから、間違いのないように要件を確認することが重要です。
(1)床面積
まず前提として必要なことは、原則として、各利用者が専用で使用する居室は、25㎡以上の床面積を持つということです。
そして、この専用居室には、それぞれ「台所」、「水洗トイレ」、「収納設備」、「洗面設備」、「浴室」を備えることが必要です。
サービス付き高齢者向け住宅には単身の高齢者が入居することも予想されますが、安全・安心な暮らしや、各種介護を行うにあたっては、最低限この程度の広さを確保しなければなりません。
また、集合住宅に狭い部屋をいくつも作り、劣悪な環境で大勢の高齢者を住まわせるといったことがないようにとの配慮でもあります。
ただし、建物内に入居者の共用スペースを設けた住宅においては、例外があります。
先に説明をしました、「台所」、「収納設備」、「浴室」については、共有スペースに設けることができます。
(逆にいえば、「水洗トイレ」と「洗面設備」については、必ず各居室に設けなければなりません)
一方で、入居する高齢者が共同して利用するために十分なスペースが確保されている場合には、各居室の面積要件は、「18㎡以上」に緩和されます。
ただ、都道府県や市区町村が「高齢者居住安定確保計画」を策定している場合は、その計画において、告示で定める基準に従って、それぞれの自治体が独自に登録基準の強化や緩和をすることが可能となっておりますので、必ず管轄の自治体に事前確認をすることが大切です。
(2)バリアフリー
そのほか、廊下の幅を車いすが通行できるようなものにすること(原則78cm以上(柱のある部分は75cm以上))、建物内に段差を少なくすること、便所や浴室及び階段に手すりを設置することなど、バリアフリーに関する事項についても定められています。
段差・・下記にあげる箇所以外は床が段差のない構造(5mm以下)であること。
玄関のくつずり(外側に20mm以下かつ内側に5mm以下の段差のもの)
玄関の上框、外部開口部の出入口及び上框
浴室出入口(20mm以下の段差)
バルコニー出入口(180mm以下の段差)
幅員・・通路780mm以上、出入口は750mm以上であること。(浴室の出入口は600mm以上)
階段・・次の要件に適合すること。
勾配22/21、路面195mm以上、蹴込み30mm以下
蹴上げの2倍と路面の和が550mm以上650mm以下
手摺・・次の全てに適合すること。
便所:立ち座りのものが設けられていること。
浴室:浴槽出入りのものが設けられていること。
玄関:設置の準備がされていること。(上框の昇降や靴の着脱のため)
脱衣所:設置の準備がされていること。(衣服の着脱のため)
バルコニーや2階以上の窓:転落防止のものが設けられていること。
便所・・次の全てに適合すること。
大きさ:長辺内法寸法1,300mm以上又は便器と周囲の壁との距離が500mm以上
設備:腰掛け式便器であること。
浴室・・次の全てに適合すること
大きさ:短辺内法寸法1,200mm以上
面積:内法面積1.8㎡以上
寝室・・内法面積9㎡以上であること。
共用廊下・・次の全てに適合すること。
床が段差の無い構造であること。段差がある場合は,傾斜路(1/12購買勾配)または手摺付き階段を設置すること。
共用廊下の片側かつ床から700mmから900mmの高さに手摺を設けること。
エレベーター・・ 3階以上はエレベーターを設け,次の全てに適合すること。
エレベーター出入口幅員が800mm以上であること。
エレベーターホールに1,500mmを一辺とする正方形の空間を確保していること。
建物出入口からエレベーターまでの経路の床に段差がないこと。
高齢者はちょっとしたケガがもとで寝たきりになってしまう例が非常に多くなっています。
日常生活の中でケガをする恐れを極力減らし、また体の不自由な入居者にとっても使いやすい住宅を整備する様、心がける必要があります。
サービス付き高齢者向け住宅の提供すべきサービスに関する登録基準

実際にサービス付き高齢者向け住宅を建築するにあたり、ハード面で備えなければならない要件については、既に簡単に説明しました。
しかし、建物を建てて終わりではありません。
入居者が安心して暮らすことのできる住宅であるためには、その後のフォローアップ体制の構築が何よりも重要です。
ハード面での整備に対し、ソフト面ではどういったサービスを用意する必要があるのか?
具体例を見ながら確認していきましょう。
(1)サービス付き高齢者向け住宅のサービス面のポイント
そもそも、サービス付き高齢者向け住宅の意義とは何でしょうか?
それは、従来の老人ホームなどの介護施設では、マッチしなかった高齢者が安心して暮らせる環境を整備することです。
これまでは、要介護認定などを受けておらず、日常の生活は自分でできるけれども、「何かあったときに即時対応してほしい」という方が多く老人ホームに応募、そのため、本当に常時介護が必要な方が入居できなくなっている状況もありました。
そうしたミスマッチを解消するために登場したのがサービス付き高齢者向け住宅です。
日常生活はできる高齢者がほとんどなので、常時介護は不要、その代わり何かあったときにすぐ状況を確認できる安否確認(見守り)が重要視されているのです。
具体的には、毎日1回以上の安否確認(入居者の状況把握)サービスと、相談援助サービスを少なくとも提供する必要があります。
特に注意が必要なのは、担当者が常駐しながらのサービス提供が義務付けられている点です。
なお、常駐する時間帯は、おおむねですが、9時~17時までとされ、その時間帯は必ず一人以上の担当者を配置しなければなりません。
また、定められた時間帯以外は、各住居部分に設置する通報装置等にてサービスを提供する必要があります。
相談援助等を行う人員については、以下の2つのパターンの基準があります。
↓
各サービスに従事している者(ただし、その事業所の本体サービスの人員基準を満たすうえで、必要な人員を除きます)
↓
一定の有資格者、具体的には、医師、看護師、介護福祉士、社会福祉士、ケアマネージャー、介護職員初任者研修の修了者のいずれかである必要があります。
*専門職が1人だけの場合は、万が一、その人が産休等を取ってしまうと欠員が生じて登録基準を満たせない状況が生じてしまうので、注意が必要です。
有料老人ホームの届出が免除されるためのプラスαのサービスについて
国が掲げる登録基準では、安否確認と相談援助を「提供サービスの最低基準」としていますが、これら以外のプラスαのサービスを提供することによって、有料老人ホームとの関係性に着目する必要があります。
老人福祉法においては、以下のいずれかを提供している場合は、有料老人ホームの届出が義務付けられています。
- 入浴・排泄・食事等の介助
- 食事の提供
- 調理・洗濯・掃除等の家事
- 心身の健康の維持・増進にかかるサービス
しかし、サ高住で上記4つのいずれかのサービスを提供していれば、サ高住の登録を行った段階で、すでに有料老人ホームの届出を行っているとみなされますので、有料老人ホームにも該当することになります。
サービス付き高齢者向け住宅での入居者との契約関係について

サービス付き高齢者向け住宅は、健康面や経済面で不安定な立場に立たされがちな高齢者に安心して暮らしてもらうため、その開業にあたってはいくつもの登録基準が用意されています。
施設のハード面、サービスのソフト面はもちろんのこと、入居者とどういう契約関係を結ぶかについても、入居者保護の観点から細かく規定されています。
トラブルの防止や、うっかりルール違反をしてしまうことを防止するためにも、開業前にしっかりと確認しておくことが重要です。
(1)入居者との契約関係
まず重要なのは、入居者が安定して住まい続けることのできる契約関係の構築です。
入居者側からすると、体調不良や長期入院などによって、住まいを追い出されてしまう様なリスクは負いたくないと言う思いを持っているのではないでしょうか。
そのため、サービス付き高齢者向け住宅の契約にあたっては、長期入院などを理由に、事業者が入居者を勝手に追い出すことができないようになっています。
そのほか、金銭面での不安をなくすため、住宅費として一般に認められている敷金・家賃、そして介護などの実際のサービス対価以外に、礼金を含む権利金やその他の金銭を要求してはならないとされています。
なお、サ高住の場合、賃貸借形式のほか、有料老人ホームなどにみられる利用権(その住宅を利用する権利。相続、譲渡、売却はできません)方式の契約がありますが、いずれも同じ基準が適用されます。
「書面による契約締結」や「その書面において、入居者の専用部分が明示されていること」などは、契約者保護の観点から最低限求められる事項です。
契約書のパターンとしては、「賃貸借契約形態」と「家賃等の前払いの有無」により、6パターンあります。
◆賃貸借契約形態
- 普通建物賃貸借契約(期間の定めがある契約)
- 終身建物賃貸借契約
◆家賃等の前払金の有無
- 毎月払い(前払いなし)
- 全部前払い
- 一部前払い
上記2種類(①、②)×3種類(A、B、C)で6パターン
(2)預かり財産の保全
また、敷金や家賃の前払い金などを事業者が預かる場合、その保全措置についても規定されています。
具体的には、以下のいずれかの措置を講ずる必要があります。
- 提携する金融機関との間で保全金にかかる連帯保証契約を結ぶこと
- 保険機関との間に保全金にかかる保証保険契約を結ぶこと
- 信託会社等との間に保全金にかかる信託契約を結ぶこと
もし、実際の契約書の作成などでご不安な点があれば、併せてサポートさせていただきますので、その際はご相談ください。
サービス付き高齢者向け住宅の都道府県によって異なる登録基準について

基本的にサービス付き高齢者向け住宅の登録基準については、国土交通省や厚生労働省が定めた国の統一基準によって行われます。
しかし、この事業は地域に根差した事業でもあり、地方によってもその状況は様々です。
そのため、実際に登録を受け付ける都道府県知事は、高齢者居住安定確保計画という計画を別途策定することにより、都道府県独自の基準を設けることができる様になっています。
では、どのような部分に独自の基準が設けられがちなのか、実際に申請する際に慌てないように確認していきましょう。
(1)サービスの基準
まず、都道府県ごとに差が出やすいのは、提供すべきサービスの基準です。
国の統一基準では最低限安否確認サービスと生活相談サービスを提供できるのであれば基準クリアとなっていますが、都道府県によってはその詳細を定めていたり、追加のサービスも要求していることがあります。
車社会で高齢者の外出が困難な地方、逆に人が大勢いる都会など、高齢者を取り巻く環境も様々だということですね。
(2)家賃の基準
また、事業者が入居者から徴収する家賃についても都道府県ごとの相場を定めている場合があります。
基本的には家賃や敷金は事業者の責任において定めることとされていますが、あまりに相場からかけ離れた金額では、制度の目的を逸脱しているとみなされてしまいます。
そのため、ある程度の相場は、各都道府県の基準として持っているのです。
実際に開業しようとするエリアによって、どういった基準があるのか、事前に確認をすることが大切です。
サービス付き高齢者向け住宅の登録を受けるための人的要件

サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者が安心して暮らすことができるように、その運営主体には健全な経営を求められています。
そのため、登録を受けるためには、欠格要件という登録を受けられない条件に該当しないことを確認する必要があります。
ここでは、どのような事項に該当すると欠格とされてしまうのか、見落としがちな欠格事項についても見ていきましょう。
(1)主な欠格事項の内容
サービス付き高齢者向け住宅の登録に関する欠格要件は、以下のようなものがあります。
- 成年被後見人または被保佐人
- 破産手続きの開始決定を受けて復権を得ない者
- 禁固以上の刑に処せられ、または執行を受けることがなくなってから1年が経過していない者
- 高齢者住まい法に違反し、その登録を取り消されてから1年を経過していない者
- 暴力団員等、または暴力団員等でなくなった日から5年を経過しない者
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
(2)見落としがちな欠格事項
これら欠格事項は、個人の場合は本人が該当してしまうと登録を受けることができませんが、法人の場合は代表者だけではなく、役員の中に該当する方が含まれているだけで登録を受けられなくなります。
自分のことであれば分かっているかもしれませんが、役員のこれまでの経歴は把握しきれていない会社もあるのではないでしょうか。
ちなみに、故意でなくても、登録時に虚偽の記載をし、欠格事項を隠そうとしたとみなされれば、罰せられることもありますので注意が必要です。



サービス付き高齢者向け住宅の登録から補助金交付までの流れ
サービス付き高齢者向け住宅の概要が分かり、そして登録基準も理解できた。
では、具体的にサ高住の登録をして補助金の交付を受けるにあたって、どのような流れで行えばいいのでしょうか?
ここでは、サ高住を開業することを決めてから、補助金の交付を受けるまでの大まかな流れをご説明します。
1.当事務所へのお問い合わせ
まずはHPのお申込みフォームや、電話にて当事務所までお問い合わせください!
2.面談と打ち合わせ
開設場所やご計画等を確認させていただき、具体的な手続きについて打ち合わせをさせていただきます。また、今後の進め方や、必要な要件・書類等についてもご説明いたします。
3.役所との事前調整
当事務所で、所管官庁と事前の調整や協議を行います。
4.必要書類の収集
代理取得が可能な書類は、当事務所で収集が可能です。
5.申請書類の提出
「すまいまちづくりセンター連合会」が運営する「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」に登録後、都道府県(あるいは政令市、中核市)の登録窓口に必要な添付書類と共に申請をします。 この際に、状況に応じて、情報の補正や確認要請等を受ける場合がありますので、迅速に対応いたします。
6.所管官庁による審査
審査にかかる処理期間は自治体によりますが、おおむね2週間から1ヶ月前後となっております。
7.登録完了
審査後、許可要件を満たしていると判断されれば、無事に登録完了です。
8.サービス付き高齢者向け住宅整備事業の補助金申請
登録通知書を添付して、必要書類を揃えて、申請を行います。
9.補助金申請の受理・審査
追加資料やヒヤリングがある場合があります。
10.補助金交付決定
11.工事請負契約・着工
工事請負契約は、交付決定後に行います。交付決定前に契約している場合は、原則として交付金が支払われませんので、ご注意ください。
12.完了実績報告の事前相談
補助事業の完了(工事の完了)後、事前相談が必要です。
13.補助事業完了実績報告書の提出
14.補助事業完了実績報告書の受理・審査
15.補助金額決定・交付
詳細は上記の図の通りです。クリックすると拡大表示されます。
このように、サービス付き高齢者向け住宅の登録や補助金の交付を受けるまでには、いくつもの段階を経なければなりません。
安心して確実に手続きを進めたいとお考えでしたら、ぜひ当事務所におまかせください。
サービス付き高齢者向け住宅の登録で必要な書類や図面について

サービス付き高齢者向け住宅の登録申請は書面にて行うこととされていますが、どのような書類が必要なのでしょうか?
適切に書類を作らなければ、登録を受けることはできず、せっかくのビジネスチャンスを失いかねません。
また、本事業は住宅の建築を伴うものであるため、当然ですが、建築図面も用意する必要があります。
専門的・技術的な面もあるため、その作成については専門家を活用することが良いでしょう。
ここでは、必要なものを、書類と図面に分けて説明していきます。
(1)主な必要書類
登録申請にあたり必要な書類は、申請先により異なりますので、ここでは、代表的な書類に限定してご説明いたします。
- 入居者と契約を行う際の約款
- サ高住の位置を示した見取り図
- 住宅、敷地、及び併設サービス事業所等の位置を表示した配置図(縮尺、方位も記載)
- 加齢対応構造(バリアフリー)等のチェックリスト
- 入居契約の登録基準適合性に関するチェックリスト
- 高齢者の虐待防止策に関する確認書
- サービスを提供する委託業者との委託契約書
- 申請者が欠格要件に当てはまらないことの誓約書
- 自己所有物件である場合は、土地及び建物の登録事項証明書
- 所有者から借り受けて運営する場合は、土地及び建物の賃貸借契約書の写し
- 法人で申請をする場合は、法人の登記事項証明書や定款の写し
- 建築確認を証する書類(確認済証の写しなど)
- 家賃の前払いを受領する場合は、必要な保全措置を講じていることを証する書類
これらは、サービス付き高齢者向け住宅の運営者として、きちんと運営できるかどうかを見るものです。
入居者が安心して暮らす契約関係か、きちんと質の高いサービスを受けることのできる体制か、運営者は健全か、などといった面を確認されます。
(2)住宅の建築図面
本事業においては手すりの設置状況や廊下の幅など、建築のハード面も詳しくチェックされます。
建築士や設計士が作成し、建築確認を受けたものがあると思いますが、そちらについても添付書類として必要です。
たとえば、住宅の間取り、住戸タイプ別平面詳細図、各室の用途及び設備の概要を表示した各階平面図(縮尺、方位のほか、バリアフリーの状況、号室番号・住戸面積を表示)や各居室の面積が25㎡に満たない場合は、共同利用部分の面積が分かるもの等です。
このほかにも、登録にあたり作成しなければならない書類は数多くあり、申請する場所によっては独自書面を要求される場合もありますので、事前の確認が大切です。
サービス付き高齢者向け住宅での約款の重要性について

サービス付き高齢者向け住宅の入居者の募集、賃貸借契約の締結にあたっては、必ず約款が必要となります。
住居の提供にあたっては不特定多数に募集を行い、契約を締結する関係上、その契約内容を入居者が確認できるよう、定型的なルールを作り、開示しなければなりません。
もちろん好き勝手な内容を定めてよいわけではなく、定めなければならないこと、注意しなければならないことがあります。
実際に募集・契約を行う上で重要なポイントを中心に、約款の重要性を確認していきましょう。
(1)サービス付き高齢者向け住宅ならではの留意点
まず原則として、サ高住においては、通常の賃貸借契約書よりも、入居者の立場が保護されることに留意しなければなりません。
一例をあげれば、長期入院などによって事業者が一方的に契約を解除することはできませんし、敷金、家賃、サービス料以外の金銭を要求してはならないとされています。
ひな型などは存在していますが、無用なトラブルを避け、かつ、事業スタイルに合った約款にするためにも、プロに関与を依頼した方が、無用なリスクを避けられ安心です。
(2)賃貸借契約全般にかかる点
もちろん、本事業も広い意味では賃貸借契約を行う不動産経営であることには変わりありませんから、一般的な貸主としての注意点もあります。
入居時、退去時の現状確認や原状回復など、入居者とのトラブルになりがちな点や、トラブルを回避できる契約書の作成なども、当事務所ではアドバイスいたします。
サービス付き高齢者向け住宅の物件確保と建築確認について

サービス付き高齢者向け住宅の開業にあたり、なんといっても重要なのは物件の確保です。
実際に入居者さんに住んでもらう住宅を確保しない限り、言うまでもなく事業を行うことはできません。
しかし、物件の確保のためには、建築確認を乗り越えなければなりません。
建築確認を受けるうえで、注意すべき点を確認していきましょう。
(1)建築確認とは?
サービス付き高齢者向け住宅に限らず、建築物はその安全性を保障するためにも、建築の際に必ず建築確認を受けなければなりません。
主に地元の市区町村役場の担当部署が行うこととなっており、建築の際に携わった建築士が申請を行うことが一般的です。
この建築確認では、基礎や構造の安全性、耐震や耐火の措置がなされているかどうか、などをチェックされます。
もちろん建築士も住宅を設計するプロですから建築確認を通る設計にしているのですが、ここで気を付けなければならないことがあります。
(2)建築確認と登録時の基準は異なる
サービス付き高齢者向け住宅の登録を受けるための基準と、建築確認の基準は異なる、ということです。
サ高住は高齢者が安心して暮らすことのできる住宅を確保することを目的にしていますから、建築基準法上の基準よりも、一般的には厳しく設定されています。
そのため、サ高住の登録基準を熟知していない建築士が設計した場合、基準を満たさない設計になってしまうことがあるのでご注意ください。
サービス付き高齢者向け住宅の登録期間と更新について

サービス付き高齢者向け住宅の登録が完了したとしても、その後の登録期間を確認するとともに、登録を切らさない様に、更新申請を行う必要があります。
登録期間が過ぎているにもかかわらず更新申請を行わないと登録がはく奪され、はく奪後に無登録で営業を行っていると罰則を適用されることもあります。
そうならないためにも、登録期間と更新申請について確認していきましょう。
(1)登録期間
サービス付き高齢者向け住宅の登録期間は5年間です。
つまり、5年ごとに更新が必要となります。
余談ですが、税制上の優遇措置なども5年を期限として設けられていることが多いです。
なお、入居者の安定的な住まいを確保するためにも、原則として10年以上は営業を続けることが期待されています。(*補助金の申請をする場合は、最低10年以上の運営が求められます)
人の人生に関係する仕事であるということを認識する必要があるかもしれませんね。
(2)更新申請
では、更新申請にあたり、どのような手続きを行うべきでしょうか?
基本的にすでに建築されている住宅のため、建築確認などは不要ですが、これまでの5年間の事業の実績や入居者の状況などを報告する必要があります。
どのようなサービス体制を構築してきたのか、実際に入居者の万一の事態に素早く対応できたのか。
その結果を厳しく審査されますから、登録後も重要といえます。
なお、当然ですが、登録後の更新申請についても、サポートしておりますので、ぜひご相談ください。



サ高住のサービス内容について

ここまで、サービス付き高齢者向け住宅の概要について解説してきました。
では、実際にこの施設ではどのようなサービスを入居者に対して提供することになるのでしょうか?
本制度には、必ず提供しなければならないサービスと、追加的に提供することができるサービスがあります。
もちろんサービスの質や量が高ければ高いほど他の事業者との差別化となり、入居者に対してアピール出来るポイントになります。
では、早速、サービス付き高齢者向け住宅において提供できるサービスについて確認していきましょう。
必ず提供しなければならないサービス
まず、少なくとも提供しなければならないサービスとして、状況把握(安否確認)サービスと、生活相談サービスがあります。
これについては社会福祉士や介護福祉士、ケアマネージャー、介護職員初任者研修修了者、医師、看護師などが常駐して提供することとされており、
夜間など常駐しない時間帯は緊急通報システムによって対応できることが必要です。
なんといっても、日ごろから「万一の時の安心感」を提供するのが本サービスですから、キモの部分といってもよいでしょう。
追加的に提供できるサービス
そのほかに可能性のあるサービスとしては、介護、家事手伝い、食事提供などです。
最近では宅食サービスとして、調理済みの段階の食事を高齢者の家に宅配するサービスなども別個に登場してきています。



入居者が決まった場合の報告事項について

開業したサービス付き高齢者向け住宅に、ついに最初の入居者が決まったとします。
嬉しい瞬間だと思いますが、この場合には、役所への報告を忘れてはいけません。
ここで、どういうことを報告しなければならないのか、いつまでに報告しなければならないのかについて、確認しましょう。
(1)報告する内容
入居が開始されたときに報告しなければならない事項として、住宅の写真、職員の配置状況、許認可を受けたときはその証明書、などがあります。
登録の際に届け出られた住宅になっているか、入居者の不測の事態にきちんと対応できる体制になっているか、建築確認や、介護保険法に定める介護施設の許認可を必要な場合は持っているか、そういった点をチェックされるのです。
(2)いつまでに報告するか
原則として、入居が開始されてから30日以内に報告しなければなりません。
もしこの報告を怠った場合、あるいは虚偽の報告をした場合などはもちろん違反行為となり、指導や登録取り消しの対象となりえます。
登録を受けたから終わりではなく、そこから役所への各種届出や報告の仕事が始まるといっても過言ではありません。
事業経営に集中できるよう、忘れがちで手間の掛かる各種報告や届出は当事務所にお任せください。
サ高住に関する補助金の申請について

サービス付き高齢者向け住宅は、これからの超高齢化社会を迎えるにあたり、将来的にも大きな収益が見込める社会貢献ビジネスでありますが、新たな基準に適合した住宅を整備する必要があることから、イニシャルコストを必要とします。
これまで社会福祉施設を経営していたようなノウハウと設備のある事業者であれば可能かもしれませんが、新規参入する事業者にとっては、こうした施設整備にかかるイニシャルコストは、考慮すべき大きな問題です。
幸いにも、国は、サ高住事業の推進を図るため、施設の建築および改修に補助金を用意していますので、積極的に活用しなければ損です。
では、その内容はどういうものか、申請にあたりどのような手続きを取ればいいのか確認しましょう。
(1)補助金の内容
サービス付き高齢者向け住宅に関する国の補助金は以下の通りです。
【建築】 … 建築費の10分の1まで (上限の詳細は、以下の表をご参照ください)
【改修】 … 改修費の3分の1まで (上限195万円/戸)
種類 | 補助額の上限 | 適用要件 |
---|---|---|
従来型サービス付き高齢者向け住宅(サ高住・サ付) | 120万円/戸 | 住戸部分の床面積が原則25㎡以上(共同利用の居間・食堂など十分な面積を確保できる場合は18㎡以上) バリアフリー構造であること *居室面積が25㎡未満の住戸については、上限額は70万円/戸となりますので、ご注意ください。 |
夫婦型サービス付き高齢者向け住宅(サ高住・サ付) | 135万円/戸 | 住戸部分の床面積が30㎡以上、かつ住戸部分に基本設備(便所、洗面、浴室、台所、収納)が全て設置されていること |
既存ストック型サービス付き高齢者向け住宅(サ高住・サ付) | 195万円/戸 | 既存ストックを活用し、消防法やバリアフリー法に適合させるために必要な改修工事あるいは
階段室型の共同住宅を活用し、新たに共用廊下を設置する工事 |
併設する高齢者生活支援施設 | 1,000万円/施設 | 新築の場合訪問介護事業所、通所介護事業所など(介護保険施設、グループホーム、有料老人ホームは含まない) |
(2)補助金の交付申請の手続き
建築、または改修しようとする住宅が、法に定める住宅の基準に適合していることが前提条件となりますが、注意が必要なのは、補助金の申請を行う場合、補助金の交付決定後でなければ、工事の契約や工事の着工は出来ないということです。
そのため、サ高住の登録後、速やかにサ高住整備事業補助申請手続きを進めなければ、建設の着工から事業開始のスケジュールに大きく影響することになります。
また、建設工事竣工後は、完了実績報告(補助金額を最終確定する手続きになります)も必要となります。
(3)補助金支給の要件
下記1~7を全て満たす必要がございます。
- サービス付き高齢者向け住宅に登録されていること
- サービス付き高齢者向け住宅として10年以上登録するものであること
- 入居者の家賃の額が、近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失していないこと
- サービス付き高齢者向け住宅として登録する住戸が100戸以上となる大規模な事業は、需要予測に関する説明を行うことができること
- 入居者からの家賃等の徴収方法が、前払いによるものに限定されていないこと
- 地元市区町村に意見聴取を行い、地元市区町村のまちづくりに支障を及ぼさないと認められるものであること
- 事業に要する資金調達が確実(融資の内諾を受けているなど)であること
サ高住に改修をする場合の建物の要件について以下の3つを満たす必要があります。
①交付申請時に入居者がいる場合は、改修工事の実施について入居者の同意を得ていないといけません。
②改修を行う住宅等が、昭和56年6月1日以降に着工した建築物であること。ただし、補助を受けて本整備事業で耐震改修工事を実施する場合、または既に地震に対する安全に関わる建築基準法またはこれに基づく命令若しくは条例の規定に適合することが確認されている場合にはこの限りではありません。
③改修を行う既存の住宅等は、築1年以上の建築物であること。
サ高住の改修を目的とした住宅取得にかかる費用について、その取得に必要な費用の補助を受けることができます。
補助対象事業費:改修を目的とした住宅などの取得にかかる費用のうち補助対象になりうる費用(用地費は除く)
補助率:1/10以内の額
補助金の額の上限:改修に必要な費用との合計に各上限を適用
例えば、既存ストック型サービス付き高齢者向け住宅の改修工事に係る補助金の上限額は1戸あたり195万円ですので、改修工事と住宅取得にかかる費用を合わせた額の上限は1戸あたり195万円ということになります。
また改修を目的として住宅等を取得する場合には以下の注意が必要となります。
①改修を目的とした住宅等の取得を伴う場合の改修工事の事業着手は、改修工事の着工をもって判断がされます。
②補助の対象として取得する住宅は、募集開始日以降に売買契約を締結するものに限ります。
なお、改修工事を補助対象として実施し、完了させなければ住宅等の取得に要する費用も補助の対象となりません。
③改修を目的とした住宅等の取得を補助の対象として交付申請する場合は、売買契約書の写し若しくは、売買契約書のひな型を提出する必要があります。
④完了実績報告時には不動産鑑定士による不動産鑑定評価書を添付資料として提出が必要となります。不動産鑑定士による不動産鑑定評価額が補助の対象となる金額の上限となります。
なお、鑑定評価は、既存部分を対象とし、改修実施前の時点で行う必要があります。
⑤最終的な補助金の額は、交付決定を受けた補助事業の完了後に完了実績報告書を整備事業事務局に提出し、書類審査及び必要に応じて現地調査等を行い、適合すると認めた場合に確定します。
なお、改修工事をする場合の補助金申請は、新築案件に比べて書類の作成が複雑となり、申請内容によっては、交付される補助金額に大きな差が出てしまう場合があります。
こうした複雑な申請書類の作成や準備を含めて、当事務所では、トータルでサポートすることができますので、お気軽にご相談ください。
サービス付き高齢者向け住宅の情報提供システムについて

サービス付き高齢者向け住宅の登録にあたっては煩雑な書類や事務が必要となりますが、その代わり都道府県知事によって登録を受けた事業者は、一定の事業水準が確保されていることになり、入居者に対して安心感を提供できます。
もちろん入居者も、きちんと登録を受けた住宅で安心して住みたいと思うわけですから、登録をアピールすることによって営業活動にも貢献することでしょう。
また、本事業には「情報提供システム」というものも存在します。
いったいどういうシステムでしょうか?
(1)情報提供システムの概要
情報提供システムは、登録を受けた事業者を公表することによって、入居者に広く情報を提供し、ニセモノの業者がはびこらないようにするためのものです。
登録を受けた事業者はこのシステムに記載されますので、きちんと登録を受けたサービス付き高齢者向け住宅への入居を希望する人は、このリストに基づいて入居先を選ぶことになります。
いわば、本事業における事業者選定のひとつの基準ともなるものですね。
(2)記載内容の重要性
この情報提供システムには、事業者名のほか、事業を実施する地域や内容についても公開して記載されています。
ですから、多くの入居者が参考にするこのシステムの記載内容に嘘偽りがあってはなりません。
そのため、国や都道府県は、虚偽の報告を行った事業者に対する罰則を非常に厳しく運用しています。
悪意はなくても、ついうっかりの報告忘れや記載ミスにならぬよう、慎重さが要求されますので、ご注意ください。
サービス付き高齢者向け住宅の家賃設定の基準について

サービス付き高齢者向け住宅の家賃については、近隣の家賃相場と大きくかけ離れた高額に設定することはできません。
もちろん一般の賃貸住宅と異なり、各種サービスを提供するため、サービス料を含めた全体の支払総額は高額になるかもしれませんが、あくまでも適正範囲内で設定するようにしましょう。
そんな家賃ですが、想定する入居者のパターンによって、大きく二つの考え方があります。
(1)自立型と要支援型
常時介護が必要な介護施設の入居者と異なり、サービス付き高齢者向け住宅を利用する入居者は、ある程度自分の身の回りのことができる人を想定しています。
しかし、その中でも完全に自立でき、もしもの時のためのモニタリングだけしてくれればいい、という人もいれば、常時は必要なくても、やはりある程度の介護は必要だ、という人もいることでしょう。
前者であれば支払総額は安めに抑えることになりますし、後者であれば、サービス料として上乗せ分が発生するでしょう。
(2)家賃設定にあたって
これら家賃とサービス料のほか、一般の賃貸と同様に敷金を預かることもできますし、家賃やサービス料を前払い金としてある程度の金額を預かることもできます。
しかし、それ以外の「権利金」というような曖昧な形で料金を徴収することはできませんし、前払い金を預かった場合には保全措置も必要となります。
サービス付き高齢者向け住宅の開業後の立ち入り検査や指導等について

サービス付き高齢者向け住宅の登録を受け、無事開業ができたとしても決して油断してはいけません。
行政は随時その運営が健全に行われているかどうかを検査することができますし、もし登録事項に事実と異なる部分があったり、法令違反を行っている場合には最悪の場合は、登録の取り消しをされることもありえます。
どのような検査、指導、そして処分が行われるのか。
もちろん法令違反を行わないことが前提ですが、確認していきましょう。
(1)事業状況の検査
改正高齢者住まい法では、事業者に対し行政は
「業務に関し必要な報告を求め、事業所もしくは登録住宅に立ち入り、その業務の状況もしくは帳簿、書類そのほかの物件を検査し、関係者に質問することができる。」
と規定されています。
この際、法令上記録することとされている帳簿が記録されていなかった場合、改善のための指示を受けることになりますので、注意しましょう。
(2)改善の指示
改善の指示の内容としては、以下のようなものがあります。
- 誇大広告の禁止
- 帳簿の作成及び保存
- サービスの提供に係る契約の遵守
この指示を守らないと、さらに厳しい処分が下ることも。
(3)登録の取り消し
何回も指示を受けたのにも関わらず従わない場合、登録内容の変更や地位継承を届けなかった場合は登録取り消し処分を受けることがあります。
いずれにせよ、行政の検査を受けてもいいように、常に適法に運営を行うことが重要です。